テキスト:稲垣貴俊(ライター/編集者)
日本の裏社会を牛耳るホワイト・デスは、
「帝国」と呼ばれるほどの巨大組織を意のままに操る人物。
ゆかり号の車内で起きた出来事は、すべてこの男が仕組んだものだった。
ホワイト・デスの正体は、元マフィアとも元KGBとも言われるロシア人で、本名はロシャン・レスニコフ。来日後、裏社会の重鎮である峰岸に近づくと、彼の側近として登用された。しかし、秘密裏に仲間を集めていたレスニコフは、準備が整うと峰岸を殺して組織を乗っ取ったのである。その際、同じく側近だった若き日のエルダーの妻も殺害した。
ホワイト・デスは、最愛の妻の死に関わった人々を葬るため、全員をゆかり号に集めていた。ホワイト・デスが自宅を離れていた日の夜、妻は、ホワイト・デスの車で移動している最中に暗殺者の手で殺害されたのだ。しかし、それは本来ホワイト・デスを狙った暗殺計画で、妻はただ巻き込まれただけだったのである。ホワイト・デスは復讐のため、ゆかり号の中で全員を殺し合わせ、最後に残った者を自らが京都駅で殺害しようと考えていた。
腕利きの殺し屋であるタンジェリンとレモンは、かの「ボリビアの仕事」を成し遂げた二人組。妻の死んだ日にホワイト・デスが自宅を離れたのは、二人がボリビアで彼の手下を殺害したためだった。タンジェリン&レモンをゆかり号に乗せるべく、ホワイト・デスは拉致された息子と身代金を奪還し、京都まで送り届ける任務を依頼。しかし、その任務はことごとく失敗する仕掛けになっていた。
蛇の毒を使う殺し屋・ホーネットは、ホワイト・デスの妻が死亡する2日前に一人の医師を暗殺した人物。しかし、その医師こそ瀕死の妻を救えたかもしれない名医だった。妻を永遠に失ったホワイト・デスは、ゆかり号の車内で自らの息子を殺害する任務をホーネットに依頼。仕事の報酬は車内に持ち込まれたブリーフケースに入っていると伝えた。
ホワイト・デスの率いる組織は、いずれ息子(サン)が継ぐはずだった。しかし息子の能力は決して優れておらず、しばしば警察の世話になることさえある。それゆえホワイト・デスは内心、息子を疎ましく思っていたのだ。ホワイト・デスが不在の夜、息子は再び警察に捕まった。そして妻は、息子のもとへ向かうためにホワイト・デスの車を使ったのである。
京都駅でゆかり号を出迎えたホワイト・デスは、いくつもの想定外の事態に直面する。娘のプリンスが自分を殺すため列車に乗っていたこと、古い因縁の男・エルダーとその息子のキムラが復讐のため待ち構えていたこと。あろうことか、妻を殺したカーバーは列車に乗ってさえいなかった。怒れるホワイト・デスはレディバグを射殺しようと、プリンスに渡された銃の引き金を引く。しかし父親の命を狙っていたプリンスは、あらかじめ銃が暴発するよう爆弾を仕掛けていた。その思惑通り、ホワイト・デスは顔の半分を吹き飛ばして死亡する。